報道記事の著作権

ニュース記事には将棋の棋譜同様に著作物要素が殆ど無いのではないか - 好むと好まざるとにかかわらず ニュース感想ブログ
http://plaza.rakuten.co.jp/catfrog/diary/200612010022/

事実の記録」について著作権がないとすれば、「いつ・どこで・誰が・何をした」という事実を書いた場合、そこには著作権は生じないということなのか。

将棋の棋譜の場合、棋譜という事実に対し、例えばコメントという形で何らかの情報が付記された場合、そこには著作権が生じるというのが一般的な見解である。

ニュースも記者が独自のコメント・表現を付け加えることにより、著作物となりうる。しかしニュースにはいわゆる「紋切り型」の表現も多く、それら「枕詞的決まり文句(「葬儀」が「しめやか」に行なわれた等)」は著作権対象に当たらないと考える。

とすれば各新聞社はニュース記事に著作権を主張しているが、その著作的要素というのはとても少ないのではないか。

この場合、上記事実の入手経路に問題が生じるのかな。よくわかんない。tomozo3、教えてください。

と言うことで、リクエストをいただきましたのでお答えします。

著作権法において著作物は以下のように定義されています。

著作権法 著作権法第一章第一節第二条
http://www.cric.or.jp/db/article/a1.html#1_1

一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

著作権法 第二章第一節第十条 2
http://www.cric.or.jp/db/article/a1.html#2_1

2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。

これだけ読むと事実の記載であるニュース記事は著作物ではない様に思えます。
で、新聞側の見解はこちら。

新聞著作権に関する日本新聞協会編集委員会の見解
http://www.pressnet.or.jp/info/seimei/shuzai/1001copyrightkenkai.htm

次に「事実の伝達にすぎない」報道記事とは具体的にどの範囲までを指すのかが問題になるが、この点法案作成に当たった文化庁の見解として「『事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道』とは、いわゆる人事往来、死亡記事、火事、交通事故に関する日々のニュース等、そのものが著作物性を有しないものをいうのであって、一般報道記事や報道写真はこれに該当せず、著作物として保護されるべきものである」(1976(昭和51)年6月『新しい著作権法の概要』)との行政解釈が示されている。
 この文化庁の考え方を適用すると、自由に利用できるニュース・報道記事は、極言すれば単純なストレートニュースにおける事実関係を追った記事だけに限定され、当該事件を構成する要因、背景または取材過程で見聞した事実などを伴った報道記事は、当然著作権の保護を受ける対象になると解釈するのが妥当である。最近の紙面における記事は背景説明の伴った解説的なもの、あるいは記者の主観、感情等を織り込んだ記事が多く、紙面構成上も高度な創意・工夫がはかられており、独創的な紙面づくりが行われているのが実情である。
 従って報道記事の大半は、現行著作権法に規定される”著作物”に該当すると考えるのが適当であり、これらの記事を他が複製、転載する際には当該社の許諾を得て正当な範囲で利用されなければならない。

引用が長くなりましたが、簡単に要約すると、コピるんじゃねー!ってことです。
ただし、社説もしくは社説に準ずる論説は39条(時事問題に関する論説の転載等)に基づき転載は問題ありません*1

で、事実と言うものをどこまで捉えるかというと

コピライトQ&A(著作権相談から)
http://www.cric.or.jp/qa/sodan/sodan2_qa.html

4.要約して利用する場合

新聞記事などの利用で判断の難しいケースは、要約して利用する場合です。若干の修正増減をする場合でも複製権が働きますが、元の表現を大幅に変えてその内容を紹介する要約を作成して利用する場合は、翻案権(27条)の問題になります。この翻案権がどのような場合に及ぶことになるのかについては、個別のケースによって様々ですが、一般的に、元の記事に依拠してその記事の主要な部分を含み、元の記事を読まなくても元の記事に表現された思想・感情が認識できる場合は翻案にあたると解されています(東京地裁平成6年2月18日判決など)。

つまり、catfrog氏が挙げた例では思想・感情が認識できる・・・以前に含まれていないので問題ないのでは、と言うのが俺の解釈です。

*1:今日初めて知ったよ!