ソープへ行けと彼女は言った。

「ソープへ行け」と僕は彼女に言われた。

僕が人生で初めて告白した彼女だった。

優しくて、賢くって。とても綺麗で。

20歳超えて童貞なんて信じられない。私に幻想を抱かれても困る。

汚物をみるような目で、心底哀れむような目で、僕はそういわれた。

ぼきん、と僕の中で何かが折れる音がした。

そうか。幻想は求めてはいけないんだ。愛情なんて求めてはいけないんだ。

一方その頃ロシアでは

一人のジャーナリストが死体で発見された。
ロシア極東連邦管区ハバロフスク郊外。額を一発で撃ち抜かれており、明らかにプロの仕業であった。

同日同刻、一人の男が疾駆していた。
"濡れた足の犬"の異名を持つ暗殺のスペシャリストである彼は混乱していた。何故、FSBに所属している彼が追われているのか?彼の愛人でもあった上官は何故、狙撃されたのか。彼が殺したジャーナリストが所持していた小包はなんなのか。

彼女が最後に言った言葉を思い出す。

『ソープへ行け』

車にたどり着き、ほっとしたのもつかの間、彼は違和感を感じた。
車が爆発したのはその1秒後だった。

彼が倒れたのを確認し、AK-47で武装した3人の覆面の男が近づく。
彼らが"濡れた足の犬"の意味を知るのはその3秒後だった。

そしてサンフランシスコにて

某IT企業のパーテーションにて、一人の男がモニタを睨んでいた。

WSDL 2.0が正式勧告:SOAPに完全対応 - ZDNet Japan
http://japan.zdnet.com/news/devsys/story/0,2000056182,20352059,00.htm

6月27日、Web Services Description Language (WSDL) 2.0が、W3CWorld Wide Web Consortium)より正式に勧告された。

「SOPAねぇ」と呟きウィンドウを切り替える。
同僚のキャシーから送られてきたファイルと格闘する。一見無意味な文字列だが、何か隠されているという。これを解いたらデートする、という彼女の言葉に仕事を後回しにして取り組んでいた。
「T…H…O…ソープへ行け?」

翌日、サンフランシスコ市警がキャサリン・ベイツ殺人の調査で企業を訪れる。その日、彼は出社しなかった。



3人がロンドンの南にあるソープパークで邂逅するのは半年後である。